- 2006-05-31 (水) 2:10
- 女性作家
せつなくてせつなくて、胸がちぎれてしまいそうだった。
なぜわたしはこんなところで、ひとりっきりで、こんなにも美しいものを見なければならないのか?人と人はこんなにも簡単に別れられるものなのか?この体に刻みこまれた快楽の烙印と、まぎれもない幸福の記憶を、どこでどうやって消したらいいのか?
愛している。まだ愛している。愛している。未練がとまらない。
もう愛していない。愛せない。憎しみだけが募っていく。
わたしのたったひとつの望みは、記憶喪失になることだった。あのひとにつながるすべての記憶を忘れたい。忘れなければ生きていけない。
「熱帯感傷旅行」(中山可穂)より
角川書店 (2002/09)
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