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最後の夜

指先が震えて、うまくカップを持ち上げる事さえ出来ない。
私はテーブルの下で、強く手を握りしめる。

自分では、口に出しているはずの言葉が、音を伴っていない事に後で気づいた。

そんな言葉、言いたくないし、このまま言わずにすませられたら
どんなに楽かわかってはいたけれど、そうするわけにはいかないの。

いつの日か、もう一歩も動けなくなる前に
私は君から離れたかった。

だからこそ、今日を選んだ。
私の背中を押してくれるものが必要だったから。

仕方ないね、わかった、と物わかりのいい人だからそういうに違いない。
私がその一言を言えば、きっと簡単に終わるんだろう、と思っていたから
どうしてもその一言が言えずに私は、酸欠の金魚のように息苦しくて死んでしまいそうだった。

お互いが見ないふりをしてきた問題を、こんな夜にひっぱりだしてきた私を憎んでくれてもいい。

いつだって私たちは、
足りない幸福感を埋め合わせしてるつもりになっていたのかもしれない。
何の意味もない行為を繰り返して、
誰かを傷つけたり、傷つくリスクを負ったりしながら、なんとかやってきたけど
もう終わりにしなければ。

だから、私を迷わせたりしないで。

もう、どこにもいけない。

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