- 2006-05-22 (月) 0:03
- 男性作家
読む本がなくなって本棚を物色する。昔買ってパラパラと流し読みした「シドニー」を手に取った。シドニーオリンピックの時の体験記だ。こういう本は外出する時にぴったりだな、どこから読んでも楽しめるし、ぱっと止められる。
読んでると、やっぱり私は村上春樹のとる距離感とか、スタンスがすごく好きだなぁと思う。もちろん言葉の選び方とか、そういうのも。けして宮本輝のように流麗で美しい日本語じゃないけど、とてもクールだしユニークだ。
例えば動物園。
入口を入ると、まずカンガルーの放し飼いのエリアになっている。でもカンガルーはほとんど人の入れない「待避地域」にひっこんでいて、簡単には触らせてくれない。人間にうんざりしているみたいに見える。「こいつら、まったくめんどくせえなぁ。早く日が暮れて閉園時間にならねえかなあ」という雰囲気。「これはサービス業なんだから」という自覚を持ったカンガルーは一匹もいない。
エミューに蹴られるととんでもなく痛いということである。挑発されない限り向こうから手は(というか脚は)出さないけれど、下手にちょっかいを出したら痛い目にあう。混雑時の地下鉄で同じ車両に乗り合わせたら、なるべく離れていた方が賢明だろう。痴漢と間違われたらえらいことになるもの。
地元紙のインタビュー。どうしてオリンピックの取材(なんか)に来たのか、という質問に。
どうしてだろう?オリンピック・ゲームそのものに、とくに興味があったわけじゃないんだ。マラソン・レースとトライアスロンは個人的に好きだから、それを自分の目で見てみたかったということはある。でもそれとはべつに、オリンピック・ゲームというものの中には、何かしら書くべきものが含まれているような気がしたのかな。それがどういうものになるのか、検討はまだつかないけれど。
コアラのブリーディング・センターに向かう時に。
「でもコアラのブリーディング・センターって何しているんですかね?」とヤくんが尋ねる。
「コアラにポルノでも見せて欲情させているんじゃないかな」と僕。
「まさか」とヤくん。少しのあいだ二人で、それぞれに「コアラってどんな種類のポルノで欲情するのだろうか」と無言のうちに想像する(とても想像できない。全裸の雌コアラ?まさかね)。
まぁ、こんな感じでわりとばかばかしい旅行記なんですよ。
文芸春秋 (2004/07)
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